医療法人社団ブロッサム 苗穂レディスクリニック

プリンシパル研究所

第32回 鉄欠乏性貧血とその治療高用量静注鉄剤の有益性について

  2024年2月20日    人生100年

2024年2月20日

日本新薬株式会社 武吉 健太郎氏

 鉄欠乏性貧血は女性に多く主な症状とし動悸息切れ顔面蒼白があり、原因として鉄の供給不足、鉄の需要増大、鉄の喪失があります。

女性は月経や妊娠授乳、また男性も消化管出血などで鉄欠乏性貧血が起こります。透析患者等腎性貧血は適応外です。

鉄欠乏性貧血の診断基準はヘモグロビン値12未満MCV85 未満フェリチン12未満が用いられ、患者数は最も多い病気です。鉄不足で貯蔵鉄→輸送鉄→赤血球鉄が順番に減少します。治療の原則は原因を特定し次に不足した鉄を補充します。経口薬、次に静注します。輸血は不必要です。鉄過剰に気を付けます。出来るだけ短期間に必要な鉄を投与します。鉄補充→赤血球鉄増加→輸送鉄→貯蔵鉄の順で回復します。

デルイソマルトース第二鉄静注は1回ないし2回の投与が可能です。最大1000㎎投与出来るので治療回数が減ります。出来るだけ短期間で治療できるメリットがあります。受診回数や注射回数が減ります。点滴か静注で投与出来ます。50㎏以上の方は1000㎎投与出来ます。総投与鉄量の設定が重要です。原則8未満の方が適応です。血清フェリチン値は一時的に上昇しますが4週間後には安定します。発熱や蕁麻疹が出ることがありますが頻度は少ないです。分娩時に平均出血量600mlの方に48時間以内に投薬したところヘモグロビンが4.77上昇しました。乳汁中鉄濃度は正常範囲内でした。過剰な鉄投与は内臓に負担し潜在的なリスクを増強しますので注意してください。生理食塩水での希釈濃度より投与速度が大切です。

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